トラウマになった一冊
特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
僕にとっての青春とは決して色鮮やかなものではなくどちらかと言うと灰色がかったものだった。それは十数年経った今も何一つ変わらない。今でこそ親元を離れ多少なりとも自由を得ることが出来、マシになったが。
青春というと10代の頃を指すのだろう。当時の僕は親に言われるままに学習塾に通い、友達と遊んだ記憶は乏しい。いやそもそも一緒に遊ぶ友達なんていなかった。月並みだが学校の休み時間は大抵図書室で過ごした。読む本の多くは小説だった。魅力ある登場人物たちがクルクルと行動し泣き笑う。あたかも僕も彼らの仲間の一人のように錯覚することができた。
そんな日常で出会ってしまった一冊。楽しかった思い出のある本の名など失念してしまったがこの悪夢のような本はタイトルも内容も忘れることが出来ない。
『パラサイト・イヴ』
体内組織のミトコンドリアが自我を持ち人間の体を乗っ取り主人公の男を利用し人類を滅ぼそうとする。
丁度映画化がされた時、本屋の目立つ場所にあったこの本を手にとったのだろう。歪んだ愛、自分が想像したことのない世界の話を垣間見た時、僕の世界に衝撃が走り猛烈な吐き気に襲われた。最後に主人公の男がミトコンドリアの愛を受け入れるのも到底理解できなかった。それは紛れもなく僕の中に傷跡を残して行ったのだ。
今でも古本屋などで表紙を見ただけで胸の辺りを締めつけられる思いを味わう。当時とは異なり知識量も増えたし考え方も変わった。しかし僕が幾つ歳を重ねたとしてもこの本を受け入れる日はこないのだろう。僕はこの一冊を嫌悪しているのだから。
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